2011年10月18日火曜日

R&Dと生産性に関する実証研究

Measuring the Returns to R&D    Bronwyn H. HallJacques MairessePierre Mohnen 
Issued in December 2009  NBER Working Paper No. 15622


これを読んでいるのでちょくちょくレビューしていこう。WPなのでリンク先からDLできる。R&Dが生産性にどのように影響しているかは非常に重要なトピックだ。
このWPでは、R&Dのリターンを計量的に分析している既存研究を非常に首尾よく俯瞰している。

Abstract
We review the econometric literature on measuring the returns to R&D. The theoretical frameworks that have been used are outlined, followed by an extensive discussion of measurement and econometric issues that arise when estimating the models. We then provide a series of tables summarizing the major results that have been obtained and conclude with a presentation of R&D spillover returns measurement. In general, the private returns to R&D are strongly positive and somewhat higher than those for ordinary capital, while the social returns are even higher, although variable and imprecisely measured in many cases.

マクロレベルの話をすると
生産性が長期の経済成長率の大部分を決める事は明らかになってきている。そのため生産性を左右するR&D投資を理論、統計的に分析する事は国の豊かさを議論する上でも重要だ。

90年代を待たずして長期的な経済成長率の源泉が技術進歩であることは新古典派のマクロモデルで明らかにされていた。また、技術進歩が経済成長に与える影響も実証的に数多くの研究がなされてきた。一方、技術進歩が長期的な経済成長に影響を与える事は解明されつつも、どの様なメカニズムで技術進歩が起こるのかは理論的には明らかで無かった。

こうした技術進歩を内生的に決定するモデルはRomer(1990)などの内生的成長理論に始まり、技術進歩のプロセスがより詳しく理論化されてきている。内生的成長理論の文脈で行くとR&Dには外部性があることになるので市場均衡は最適にはならない。こうした場合、R&Dなどに補助金をかける事でパレート改善する事が出来る。こうした政策を設計する場合でも、R&Dの生産性や収益率に対する寄与を計量的に把握することは重要だ。


一方
産業レベル・企業レベルでの話をすると実証研究もマイクロデータの整備、計量手法の改善により精緻化が進められている。(ボリュームが圧倒的に違うのはひとえに私の背景知識の差を反映している。wwww)



誰がどんな事に興味がるかって言うと
Policy maker は社会的なリターンに興味があるだろう。内生的成長理論のところでも指摘した通り、個々のR&D実行者がその投資を実行するインセンティブを理解して政策を組む必要があるからだ。一方で、Economistや企業の意思決定者たちは特に後者に興味があるだろう。なぜなら、ほぼ無限個あるR&D投資戦略の中でどれを取るべきかを評価しポートフォリオを組まなくてはならないからだ。ってな事に触れられている。


と言う訳で軽くintroductionに触れながら一回目。メソドロジーは次から触れるかも(予定は未定である。

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