2013年8月13日火曜日

DCF法とAPV法の選択

企業価値評価を行う方法で最も広く使われているのはDCF法と言って差し支えないと思いますが、何でもかんでもDCFすりゃいいと言う話でもなく、それぞれの企業価値評価手法で置かれている前提が何で、当該案件でその前提の妥当性はあるかどうか考えるのも重要ですねって話をしたいと思います。

何回かに分けて、資本構成に関する前提と、それに関連してAPV法を見て行きたいと思います。

■DCF法の算定方法

DCF法では、ざっくり言ってこんなステップで評価を行います。


  1. 対象企業の事業計画から各年度のFCFを見積もる
  2. WACCを算定する(WACCの算定自体で一本エントリーが出来てしまうので今回は割愛)
  3. FCFをWACCで割引き、現在価値の総和を算定する(=事業価値)
  4. Net Debt (=非事業資産-有利子負債)を算定する
  5. 事業価値からNet Debtを差し引く(=株主価値)

今回取り上げるのが資本構成に関する前提事項で、このステップで言うとSTEP2とSTEP3に関連します。

WACCは、株式と負債の資本コストの加重平均です。資本構成によってそれぞれウェイトが付けられます。例えば、負債40%と株式60%で資金調達している会社の場合は、下記の通り算定されます。

WACC=0.4×(負債コスト)×(1-実効税率)+0.6×(株式資本コスト)

ざっくり言って上記がSTEP2に当たるパートですが、問題はSTEP3です。
通常DCF法で算定を行う際は、来期のFCFもこのWACCで割引きますし、以降の年度も同様にこのWACCで割引きます、無限期先でも同様です。

将来に渡り同じWACCを使い続ける事が何を意味するかと言うと『将来に渡り対象企業の資本構成は一定である』と言う事をDCF法ではあんに前提としているのです。

さて、この前提にたった時に、どんなケースでどんな問題が発生するでしょうか。
ポイントは負債調達による節税効果の価値です(答えを言ったようなもんか)。

次の記事でAPVに絡めてこの辺について書きたいと思います。

2013年6月26日水曜日

すらすら税効果会計ですらすら学習




税効果会計に関して全然理解できていないなあと思ったので本書を手にとってみました。

本書は、組織再編に関連して書かれている訳ではないので、M&Aに出てくる論点に関連して学習したい場合は別の本で補う必要がありますが、そもそも税効果会計って何よって取っ掛かりには非常に良いように思います。

例えば、下記の記事で言っているような事が全く理解できないのであれば、本書を手に取るレベルとして適切でしょう。

「会計の崖」から落ちたシャープ(繰延税金資産の解説)

”会計と税務で、計上のタイミングがズレている取引があるため、各期の実際の法人税等は、税引き前の利益とは対応していませんでした。そこで、法人税調整額によって、ズレた分の法人税等の費用の計上タイミングを調整する手続きが税効果会計でした。” とあるように、会計と税務の乖離がどこにあって、それを調整するために税効果会計がどういう働きをしているのかっていうのを、本の前半で非常に懇切丁寧に説明してくれています。

別表の具体的な見方から、法定実効税率の考え方、繰延税金資産の資産性と回収可能性の話まで分かりやすくまとめられています。

M&Aの話題に関連して税効果会計がどういった論点が出てくるのかって話は、下記のブログでも取り上げられていました。ここらへん、もう少しM&Aに関連付けて勉強してみたいところです。

(例えば、Valuationの際には、繰延税金資産を非事業用資産として加味すると思いますが、ベースになるプロジェクションでリスクケースをひいた場合に、回収可能性からこれをどう扱うかって話が出てきますね。)

121030 / 175 【税効果会計の基本1】Valuationにて繰延税金資産をどう扱いますか?

121113 / 176 【税効果会計の基本2】税効果会計が必要とされる理由は?

121114 / 177 【税効果会計の基本3】税効果会計が必要とされる理由は?(承前)

121121 / 178 【税効果会計の基本4】繰延税金資産の回収可能性とValuation

2013年6月24日月曜日

最強のコスト削減は最強の間接材コスト削減(ITと物流費は最強ではない)でした



最強のコスト削減とは言うものの本書が対象としているのは「間接材コスト」の削減のみで、人件費の削減や資産圧縮、製造原材料費の削減などには触れられていません。

人件費削減は、従業員のモチベーションが下がったり、キーパーソンの流出につながったりとデメリットが大きい。
原材料費に関しては、調達の部署を持っている企業も多く、これに関しては十分にコスト削減されている可能性が高い。

と言うわけで、削減余地の大きい間接材コストにフォーカスを当てているそうです。

ざっくりとしたポイントとしては下記
・社内で分散して発注してしまっている場合は、窓口を一本化してボリュームディスカウントを狙いましょう
・原価推計によって妥当なコスト水準を見積もり、コスト削減余地を見積りましょう
・サプライヤーが複数いる場合は、サプライヤー間で競争させてコスト左舷を狙いましょう
などなど

割りと当たり前っちゃ当たり前な事が書かれてる訳ですが、もう少し具体的な事は費目ごとに(例えば第三章印刷費、第四章諸費など、この細かさで章がたつのかと驚いた訳ですが)書かれているので、実際のPJの際にはそれぞれの費目の章を読み返してみると良いように思います。IT費用と物流費の章は少々表面的な記述に終始しているので、これらに関しては別の本を参照したほうが良さそうですね。

2013年6月21日金曜日

ラルチザンのコートダムールで夏を乗り切る

夏に向けて香水を新調しました。二年前の夏にラルチザン表参道店で試してみて気になっていたコートダムールを購入。こちらは生産中止になっていたのですが、この度、再販売となったとのことで、日本向けには500本ほど割り当てられているらしいです。


トップノート:グリーンマンダリン、フルール・ド・セル、ローズマリー
ミドルノート:イモーテル、ハリエニシダ、イトスギ
ラストノート:エニシダ、エリカ、海岸松

調香師は、Jean-Claude Ellena の娘さんの Celine Ellena です。そういえば二人でやってるDifferent Companyのフレグランスはまだ買ったことがないので後々…

ラルチザンのHPによると、フランスのロワール アトランティックの海岸にインスパイアされ、ゲランドの希少な塩の花"フルール・ド・セル"をベースにした独創的なフレグランスで、甘くソルティーなトップノートから、海辺の花や木々が優しく香るミドルノートになるんだそうな。

マリンノートに甘い香りがのっている感じで、ミドルノートにかけては塩キャラメルみたいな香り?と表現している人もいるみたいです。甘みのある香りが主体なフレグランスの割りには爽やかに使えて不思議な趣きのフレグランスです。

2013年6月19日水曜日

事業計画策定ティップス:メッシュ・メッシュ・メッシュ、なにはともあれメッシュ

先日まで入っていた案件で事業計画策定に携わった。計画のモデルを作りこむってのを主に担当したので、そういった観点から気がついたティップスなどまとめていく。

■メッシュ・メッシュ・メッシュ、なにはともあれメッシュ



事業計画の中でも特にトップラインは製品や地域、事業ごとの積上で作りこむ事が多い。その場合、最終的に提出するモデルをどういったメッシュで作りこむかをプロジェクト開始直後にすり合わせる事が最も重要。

そうした場合、誰が何のために使う事業計画なのかに立ち返る必要がある。

作成した事業計画を受領した対象会社がその計画に基づきモニタリングをして行きたい場合は、かなり詳細に作り込む必要がある。例えば、対象会社が管理している製品単位ごとに損益を月次レベルで追えるようにモデルを積み上げることが考えられる。そうした粒度で作らないと損益が悪化した時に、原因を把握しきれなくなる(どの製品の売上が計画値を下回ったのか?どの製品のコストが計画値を上回ったのか?etc)

一方、対象会社に投資を検討しているファンドから事業計画策定の案件を受注したケースを考えてみよう。彼らは、LPを十分に説得できる粒度の事業計画でよいと言うかもしれない。そうした場合は、詳細な製品単位での積上と言うよりは、製品群ごとの積上でよいと言う風に落ち着くかもしれない。この場合は、大まかな収益性の見立てを知りたいわけだから。

誰が何のために使う計画かを明確にしてからメッシュを確定し、そのメッシュでよいかを関係者の間で合意を取っておかないと、プロジェクトの中盤~終盤にかけてモデルを全部作り直しと言う下っ端が最も泣きを見るパターンが実現してしまうので、ここらへんは確実におさえて行きたい。

とはいえ、上記はあるべき論っちゃあるべき論なわけで、実際の所は対象会社がどの粒度でデータを管理しているかにモデルの詳細度の上限は制約されてしまう事が大半でしょう。

2013年4月12日金曜日

香水選びで失敗しない2つのtipps



ショップで匂いを試してみてお気に入りを発見。勢いあまって買ってみたはいいものの、後日使ってみたら「え、印象ちげぇ…」ということは、まま起きうる事です。

そうした事態をなるべく避けるためのtippsが以下。とても簡単だけど、ハズレを引く確率はぐっと下がると思う。


■ミドルノート、ラストノートも確認しよう

使ってみて印象が違うって事態を避けるためにはこれが効果的です。

香水は、時間を追ってトップノート→ミドルノート→ラストノートと香りを変化させます。揮発しやすい成分のものから最初のニュアンスが強く出てくる訳ですが、当然、ショップで一振りかけてみた印象はトップノートのものだけになります。

購入してから実際に使ってみると、ミドルノートやラストノートの香りが気に食わないということは十分にありえる事です。特にラストノートは、甘い香りや重めの香りが残ることが多いので、このへんで好みが分かれやすい印象があります。

トップノートは、30分程度続き、その後、ミドルノートが3時間程度、ラストノートはおよそ半日程度持続すると言われています。パフューマーもミドルノートをその香水のメインと想定して調香していますので、購入を検討する際は、ミドルノートを確認してから購入することが無難でしょう。

ショップではたいてい匂いをお試しするための紙(これをおしゃれに言うと、ムエット(試香紙)となる)を置いてますし、それをビニールの袋にいれて持ち帰らせてくれるので、これを貰って帰って、ミドルノート、ラストノートを確認してみるといいでしょう。

(ちなみに、伊勢丹のパフュームコーナーのエルメスでは、むかし、庭シリーズのデザインされたムエットが配られてたりしてました↓)




■肌にのせる

香水は、温度変化によって香りのニュアンスが変化していきます。ざっくりと言うと体温が高いほど香りは拡散しやすいと言えるでしょう。

香水は複数の香料を調合して作っている訳ですが、香料ごとにどの温度でどの程度香り立つかは異なります。ですので、温度によって、つまり付ける人の体温によって、同じ香水でもニュアンスが微妙に異なってきます。

先ほど、ムエットを使ってトップノート、ミドルノート、ラストノートを確認したほうがよいと書きましたが、自分がつけた時に自分が気に入るニュアンスになるかを確認する意味でも、自分の肌にのせてみることは重要です。

温度について書きましたが、これはつまり付ける身体の部位やその日の気温によっても異なりうると言うことです。このへん、季節を考えて香水を選んだり、シチュエーションにあわせて付ける部位を変えてみたりすると楽しいと思います。


と、手軽だけど手堅い方法をご紹介しました。ショップで第一印象で飛びついて買っちゃうのは危ないよって話でした。

2013年1月9日水曜日

経済学トップジャーナル9つの事実

明けましておめでとうございます。新年の豊富やそれに類するエントリーなどモノともせず、2013年最初のエントリーは経済学トップジャーナルの最近の傾向に関する論文の紹介になります。

先日、NBERに載った"Nine Facts about Top Journals in Economics"をご紹介。

経済学の世界でトップ5のジャーナルといえば、Econometrica / American Economic Review / Journal of Political Economy / Quarterly Journal of Economics / Review of Economic Studies ですが、今回NBERに載った論文は、これら5つのジャーナルに関するデータを時系列で集め、1970年代と現在でどういった変化があるかをまとめています。

  1. 年間投稿数は倍増(1990年→2012年)
  2. 1年間にTop5に掲載される論文の数は、1970年代後半の400本から直近300本に減少している
  3. AERはTop5合計のパブリケーション数の40%を占める
  4. 最近パブリッシュされる論文は平均して1970年代のものよりも3倍長い
  5. 論文1本あたりの著者の数は、1970年代の1.3人から2.3人に増えた
  6. Top5に掲載された論文はめちゃくちゃ引用される
  7. QJEはTop5の中での引用数ランキングを4位から1位にあげている
  8. 長かったり、共著者が多かったりするほうが引用数が多くなる
  9. 開発経済学や国際経済学の引用は増えてるけど、理論とエコノメはこのところ減ってきてる

1と2の為にacceptされる確率は15%から6%に下がっているらしく、本当に狭き門になっている様です。
3は確かに実感がありますね(AcemogluもAERに山のようにパブリッシュしてますね…)
4は院生泣かせかと(笑
5は自然科学同様の傾向ですね。専門が細分化されるほど、共著者の数は増えていくのは自然な流れと言えます。
6,8,9はまあそんなもんかなと言った感じですが、7は全く肌感がなかったので意外でした。

さて、これをみて業界関係者の皆さんは何を思ったのか、それを考えるのも楽しそうです。

2012年12月27日木曜日

【雑感】今年最後のプロジェクト


約一ヶ月程度はいっていた案件の中間報告会が今日終わりました。
売上高兆円超えクラスの所謂大企業の案件は初めてでしたが、今までコンサル業界でこういう事あるよと聞いていた色々なことが起きました。

このくらいデカイ企業の本部長クラスの人は、本気で自社の方向性に悩んでいるし、大まかな問題点は把握しているけど、ここぞと言う意思決定が出来ない(決断するに足りる分析、洞察などが足りていない)状況にあると言う事を実感しました。

また、何回かの経過報告会の中で経営企画の方が、私達があなた方に求める事は『当社の常識が業界の非常識となっているポイント』(=勝ち組の勝ち方から乖離してしまっている所)を第三者として指摘する事と言ったことは、働き出す前からコンサル業界あるあるとして聞いていた事であり、ある業界に所属しながら自社を客観的に評価することは本当に難しいんだなあと実感しました(消費者として、うはッwwwこんな製品いらねーって出す前に気づけよwwwとか言うのは容易いですが…)

自分の事に引き戻すと、徐々に市場動向の分析や競合財務分析など計数的なセクションをザラッと投げてもらえるようにはなってきています。とはいえ、まだまだ数値のミスや推計の仕方の詰めなど反省点ばかりで、特に一個ランクうえの若手の先輩には細部にわたってフォローをして頂いて頭が全く上がらなすぎて地面にのめり込んでいる程です。

研修が終わって働き出してから凡そ半年程度が経過しましたが、ここいら辺で何が出来るようになったのか、何が出来ないのか、何をしたいのか、その辺を年末に棚卸出来たらと思います。

2012年11月23日金曜日

【定点観測】5年後に何をしていたいかをコンサルタント一年生に聞いてみると

「5年後に何をしていたいか」

会社の飲み会で本気の質問か酒のツマミか分からないが上司に聞かれる事がある。メンターとの面談でも形式上必要なのか私のメンターが個人的に聞いて来た事なのか分からないが、同様の問いかけを投げかけられる事がある。いずれにせよコンサルタントとは、この問いかけが大好きな様だ。

私の現在の応えは「目の前の事に手一杯でそんな事を考えるゆとりがない」が正直な所だ。飲みの席でも上司には正直にそう伝えた。「なんだつまんねー」と言うリアクションも予見していたが、意外なことに上司の反応はコンサル一年生はそんなもんだよなと言う同意であった。

実際5年後に何をしたいかを今持てていない事は、あまり悲観していない。昔から自分にある傾向だが、数年後にしたい事は何となくふっと降って来て、何となくその通りやって来てたから、今もまたそれが降ってくるのを待てばいいと思っているからだ。それが、一年以上降ってこなかったら仕事に流されている事だろうと判断して、その時に考えればよいと思う事にした。いずれにせよ、今は目の前の事で学ぶ事が多すぎるし、それを吸収して走っているのが単純に楽しいのだ。

長い目で見てやりたい事はぶれていない様な気がする。上司と話をする中で再びそれを思い出して、今はいいけど、もう半年したらまた考えてみようと言う気持ちにもなった。

物事の進め方の王道は、適切な目標を設定し、バックワードインダクションに現在、これからの行動を計画し粛々と進めて行く事の様に思う。

そのうち、またその軌道にもどるだろう。

2012年11月7日水曜日

BI市場雑感

BigDataがバズワードでにわかに盛り上がってきている昨今ですが、それに関連してBIツール市場の動向も最近ささっと見た範囲で雑感を吐き出したいと思います。


■全体の概況としては…

外資系を中心に、2007年前後ERPベンダーやコンピュータ関連の会社が相次いでBIツール関連の企業買収を進めており、従来は分析の専門家向けの単品製品だったBIツールが、企業の基幹システムの中で財務、営業、マーケティングなど経営の多岐にわたり分析機能を提供する製品へと位置づけを変えてきているそうです。

事例として分かりやすいのはIBMのSPSS買収でしょうか。
統計や経済学関連の人は御存知の方も多いでしょうが、SPSSは従来統計分析をするためのソフトウェアで、研究関連を中心に使われることが多い印象を持っていました。IBMのSPSS買収も、ビックデータとか言われるようにビジネスに関連して増え続けるデータの山を統計的に分析し、意思決定に役立つソリューションを提供するために買収したものと思われます。

こうした個別の分析機能を提供しているBIツールの買収が進んだことで、BIツールは基幹系システムとの連携の中でデータの分析・レポーティングに使われることが増えてきたといえます。


もう一つの流れは、ハードウェアの性能向上や分散処理技術の発達が挙げられます。

日々蓄積されるデータは構造化データだけではなく非構造化データまで含め爆発的に増えているということは周知の事と思いますが、サーバやストレージと言ったハードウェアの性能向上や、分散処理技術の発達によって、従来よりも短時間により大きなデータを処理する事が可能になってきておりBIツール、案外つかえるかも?と言った流れだそうです。


■とはいえ…


一点目で触れたBIツールベンダーの買収の話も美味しい話だけではなく、買収側の既存基幹システムとのデータの整合性などイマイチ連携がうまくいっていないと言う話も聞くわけです。これとは別に、IBMってSPSS買ったはいいけど今どう活用してるっけってのは、私が知らないだけだとは思いますがイマイチはっきりしていないと言う印象です。

さはありながら、大型買収案件が相次いだ2007年あたりからカレコレ5年ほど経過してパッケージ同士の連携も進んできているでしょうし、ビッグデータブームと併せ今後の方向性はどうなんだっては話です(要調査


二点目で触れた処理速度、処理キャパの話も話としてはそうなのですが、分析する武器はあれど活用できないとはままある話で、BIツールを導入した企業のアンケート調査では、事前に期待したよりも経営の意思決定に役立てる事は出来なかったなんてアンケート結果はまま目にするものです。

実際のところ、大量のデータをどの様に分析するのかと言ったビジネス面での人材・スキル不足や、統計的な手続きをきちんと行える人材不足(BIやビッグデータを担当するシステム関係の部署の方は、システムの事には詳しいかもしれないが、統計の専門家ではない事はままあるでしょう)など活用面に課題は山積されている様子です。


とまあビッグデータに関連して結構あつい分野であるものの、課題やなんやを見ていくとあーやこーやあるなと言った感じです、興味深い市場ですが。

2012年9月14日金曜日

競合調査のきっかけとしてのM&A事例調査




「ちょっとX社の戦略簡単に調べておいて」

コンサルをやっているとこうしたお題が降ってくる事があります。そのために過去のでかいM&Aの事例を調査するのはひとつの方法と言えるでしょう。額がデカイほど、戦略上どうしても実現したい事を表している可能性が高いからです。


「(X社の戦略の移り変わりを知りたいから)Y社買収の時の買収目的調べておいて」

このような形でお題が降ってくる事もありますが、()の中を言ってくれるとも限りません。下っ端の私が犯してしまったミスは、既にご想像の通り、買収時のプレスや記事を確認し


「買収目的は、XX事業やYY事業の強化とZZな顧客の獲得です!」

「で?」

「(ドッギャーン買収目的調べろ言うたやぁあああん)」


というものです。



ここで、私が答えるべきだったのは、買収の目的はこれこれこれで、それって満たされていない戦略を充足するために行われた訳で、そこから当時の戦略がXXであると読み取れます、と言う事でした。


「買収目的を調べてって言ったけど、それってどのスライドでどんなメッセージを出したい為にその情報を収集してって頼んだか把握していますか?」


単なる作業者になっちゃ駄目だし、もっと意図や論点ってのを意識しないとダメだなあと課題は積み上がる毎日です。

2012年4月7日土曜日

Why nations fail? 発売記念パピコ/(^o^)\ 制度は豊かさを決めるんだ!


Acemoglu  と Robinson が 三月に " Why nations fail? " を出版した。

『各国の長期的な経済発展の違いは本質的に何によって齎されるのか?』
彼らは制度と言う観点からこの十年間、以上の問いに答えるべく研究を積み重ねてきている。その研究成果を一般向けの書籍として纏めたのがこの本だ。

経済成長モデルはソローの新古典派成長モデルから始まり、最適成長モデルへと精緻化が進み、90年に入る頃には長期的な成長要因である技術革新のプロセスを内生的に成長モデルに組み込む事となった。

こうした成長モデルは『物的資本蓄積するから』『人的資本蓄積するから』『技術革新が活発に行われるから』経済成長をすると言うことを特定した。実証的にはバロー流の新古典派成長モデルの推計を始め、こうした基本的な事実を実証的にサポートする論文が山の様に書かれることとなった。


さて、どうやら物的資本や人的資本が蓄積され、活発に技術進歩を行えば高い確立で『離陸』出来るらしい。では、『なぜ、人的、物的資本投資を行わないのか?技術革新を行わないのか?』と言う疑問が生じる。

確かに、投資が過少になる均衡が生じる複数均衡モデルや市場の失敗を取り込む事でこうした事象を説明するモデルは山のようにあるが、彼らが着目したのは『制度』だ。『制度』こそ市場における行動を規定し、豊かさのパフォーマンスを決めると言うわけだ。物的、人的資本投資、研究開発投資を行えば成長することは分かっているが、制度が悪いからそうした行動を行うインセンティブを欠いていると言うのが彼らの主張だ。

と言うわけで次回は具体的にどんな研究をしたのか 有名な2001年の実証論文をレビューしてみよう。具体的には、制度の代理変数を説明変数に実質一人当たり所得を説明できるかトライした論文だ。例えば、こんな感じに。



(こちらは、各国の2005年の実質一人当たりGDPと Park (2005) の特許に関する制度指標を元に筆者作成)

果たして制度はどの程度、各国の所得格差を説明するのか?
制度を用いて単純にOLSをかけていいのか?
制度を説明変数に加えた時、これまで重要とされていた変数の効果はどうなるのか?

面白いトピックが盛り沢山だ。

2012年4月5日木曜日

100年予測を読んだった





地政学的な分析がどの様なものか気になったので手にとってみた。

本書は地政学的な分析に基づき21世紀の百年間でどの国が覇権を握り、どの国が超大国に戦いを挑むのかを示している。

本書が示す結論は、
・21世紀の間は相変わらずアメリカが世界の覇権国であり続ける事
・トルコと日本が覇権国アメリカに(宇宙!)戦争をしかける事
・中国は張り子のトラであること
が挙げられている。

人口動態やそれに基づく長期的な経済成長(国力)の予測、地理的な要因(ある地域の覇権を得るには陸海空、どういった要所を落とすべきか守るべきか)によって、それぞれの国の長期的な行動を予測している。

制海権が如何に重要なのか、このハイテク戦争の時代に案外地理的要因は効いて来るのかと言った観点は今まで持ち合わせてなかったため新たな気づきといえるが、出てくる主張の一つ一つに疑問を呈したく成る。

これはどんな理論に基づいているのか、実証的にサポートされているのか、そもそも実証の俎上にあげられる仮説になっているのか…

全体として言いっぱなし感が全開であり、「これは長期の予測であり、少々の誤差は瑣末なものだ」と言う正当化ではとてもカバーしきれないように思う。また、後半の宇宙戦争の下りにさしかかると最早読み続けるのが苦しいジョークになってくる。


やはりこう言った大きな風呂敷を広げず、問題・仮説を丁寧に分割し、実証的な結果を積み重ねていく事が肝要なのかと改めて感じさせられた点では役にたったと言える。

2012年4月4日水曜日

ペースとデバイス


働き出して二日が経ちました。と言ってもまだまだ退屈なオリエンテーションばかりで働いていると言った感じはありません。二日通ってみて通勤の具合も把握し生活のサイクルも分かってきた様に思います。

新しい環境に変わって取り組むべきは勉強をする場所、勉強をするペースを確立する事がでしょうか。多くの人がそうである(そのように願ってますが)様に、僕も大概怠惰であり何かしら自分を縛り付けるコミットメントデバイスか強いインセンティブがないと勉強できないものです。

まずは研修のこの一ヶ月間、どこでどの時間帯で勉強する時間を捻出し、気持よく取り組めるかさっさと考えてしまわないとなと感じてます。
ちなみにこの二日間は、帰宅後の自宅では勉強など出来ないというこれまでの生活で繰り返しテストされてきた実証的な結論を補強することなりました。生活が変わったところで構造変化はなかったようです。




大学院の頃は大学の近くのスタバを頻繁に利用していました。研究室の日当たりが悪いことや空気が淀んでいる事からスタバで勉強することが非常に多かったです。そのうち、刷り込みが完了しスタバに行くと勉強モードになると言う風になりました。

「勉強するのにスタバ通ってて金かかるねコーヒーなら研究室で安く飲めるよ!」とは良く言われたものですが、対価はコーヒーではなくこの刷り込みに払っていたのです。怠惰でdiscount rateも高めな私のような人間は勉強するにもより多くのコストがかかるのです笑。

どこかココに行くと勉強モードに変われる場所と言うものを早く作ってしまうのが良いって事でしょうね。

経済成長のミステリー



経済成長理論とその実証研究、ならびに近年より研究が進んできている不平等や制度と経済成長の関係についてサーベイを行っている。タイトルのからして以下にも一般図書の様だが、実際は先行研究のサーベイとなっているので経済学専攻の人が見た方がいいだろう。

この本は経済成長理論の発展と同じように章だてされている。

技術進歩を外生とおいた初期の成長理論のサーベイと実証的結論(条件付き収束、絶対収束など)を論じる。次に生産性と内生的成長理論を俯瞰する。最後の3つの章は、開放体系における成長理論、不平等、制度で構成される。

開放体系の成長理論では、技術の模倣やスピルオーバーについて紙面を割いている。不平等の章では、特に所得の分散が大きくなることが経済成長にどのように影響するのか実証研究をサーベイしている。最後の制度と経済成長は2000年以降、Acemoglu や LaPortaらが研究を進めている分野だが日本語のサーベイは少ないので有用だろう。


本書の出版は2004年であったのでやむを得ないが制度と経済成長に関する研究は理論実証ともに2000年代後半も急激に増えている。その意味ではこの本でカバーされていない範囲は広い。例えば、所得格差と制度の関係を論じる研究はAcemogluらが2005年あたりから進めているし、開放体系におけるスピルオーバーと制度の関係はHelpmanが行っている。また、当初は制度と経済成長に関する実証的なファクトを積み上げる研究が多かったものの制度と成長に関する理論研究も精力的に行われている(例えば制度の経路依存性に関する理論的な根拠をAcemogluは書いている)。


とまあ邦書がまだまだ少ない分、きっかけとしては有用だが扱っている範囲は狭いなと言った印象。
また既存研究のサーベイもボリュームやチョイスを見る限り Handbook of Economic Growth でいいのではないかと 思うところもあり立ち位置が微妙な本だなあと言うのが正直な感想。

2012年3月27日火曜日

Hermesの「ナイルの庭」はどの様に生まれたか

前回は、ジャンクロードエレナの本のレビューを行った。今回はその続き。
・芸術と産業としての香水:ジャン・クロード・エレナ(Jean Claude Ellena) のお話

以下の一節は、エレナが一つの香水を作る時にどんな信念を持ち、どの様にインスピレーションを得ているのかがよく表されている。多くの調香師がそうであるように、彼も各地への旅行と自然からインスピレーションを得ることが多いようだ。

私は匂いの剽窃者、盗人、そして掠奪者だ。自然は私にとっては、きっかけ、出発点だ。しかしインスピレーションの源や創造の息吹ではない。太陽は昇り沈むのは、どこであろうと美しい。どこからどのように見るかというだけの問題なのだ。私は香水のなかで、お茶や小麦粉、いちじくを自然のままに再生して人を驚かせようとはしない。香水をつくるとは、匂いを解釈し、記号に変換することである。この記号が意味を伝えるのだ。(P69)

こうした香水作りの一つの例として、彼が手がけたエルメスの香水があげられている。


2005年、エルメスの「ナイルの庭」のテーマを選んだのは、アスワンのナイル川のなかの島の庭を散歩しているときだった。マンゴーの並木道、五月。マンゴーの木の枝は青い果実の重みでたわみ、果実が手の届くほど低く垂れていた。ひとつ、実をもいだ。花床から透明な乳液があふれ出た。鼻に持っていった。匂いに魅了された。樹脂、オレンジの皮、グレープフルーツ、にんじん、オポポナックス、杜松、酸味のある匂い、強い匂い、優しい匂いなど、匂いのイメージがあふれ出てきた。抗わず、感覚を愛撫されるままに、匂いを自分のものにする。この喜びと感覚を、私と一緒にいる人々と分かち合いたい。こうしてテーマが決まった。(P70)

この文章からも匂いたつ様だ。ナイル川のマンゴーの青い果実からインスピレーションを得たようだが、その一つの匂いから非常に多くの着想を得ていることが分かる。何よりこの文章だけでも、彼が作った香水をどうしてもかいでみたいと思わされた。と言うわけで、



この庭を、紋切型ではない方法で物語りたかった。青いマンゴーの匂いが記号となり、ナイルの島の庭の象徴となった。あとになって、エジプトではこの果実のたまに年に一度のお祭りがあることを知った。(P71)

新宿の伊勢丹に行って実際に匂いを試してきた。彼はエルメスで既に庭シリーズとして4作品を出しているが今回はナイルの庭と四作目の屋根の上の庭を試してきた。ナイルの庭は、トップノートはグリーンマンゴーとロータスフラワー、ミドルはイグサ・シカモウッド、ラストノートはインセンス・シクラメンウッドと言う構成。

節度ある甘さとグリーンマンゴーの青い匂いからユニセックスな印象もある香水だった。家に帰ってきて匂いをつけてもらった紙を再びかぐと、パウダー系の香りが際立っていたが心地良い甘さだった。


匂い自体も素晴らしいものの、こうした創作の背景、ストーリー付けも香水という製品を考える上では重要な要素であると体感できた。単に匂いだけを与えられてこうした着想をr得られるほど消費者の多くは感受性は豊かではないのだ。

■香水が芸術たるには

香水がひとつの完全な芸術表現のかたちとして認められるには、批評が不可欠である。ただ調香の原料を明かし、列挙して、描写するだけではない。料理のレシピーを読んだだけでは、完成した料理の味を舌で味わえないのと同じことだ。そうではなくて、香水を、その表現、独創性、クオリティー、私が文体とよぶ「香水の書き方」で、判断するのだ。文体こそ、香水を、それを調合した調香師から区別するものである。こうした批評を受けて、調香師は香水作りをたえず見直すことになる。市場では、あらゆるブランドが他のブランドと競争せざるをえない。つかのまの状態にすぎない目新しさよりも、差別化のほうが重要になる。差別化によって、ブランドの永続性も保たれる。(P91)

芸術たるには生産者だけではなく健全な批評家が必要だろう。評価をする上では、それを表現する語彙が必要になる。これが既に確立されている分かりやすい例はワインだろう。どうやら香水の批評に関してはまだこうした共通語彙が浸透しきっていない様だ。良質な批評と競争にさらされることで、より独創的で美しい香水がまだまだ現れる余地があると考えるとまた楽しそうだとも言える。

芸術と産業としての香水:ジャン・クロード・エレナ(Jean Claude Ellena) のお話


先日、調香師ジャン=クロード・エレナの本を読んだのでそのレビューをした。
・調香師というプロフェッショナルな世界:ジャン=クロード・エレナを知ってるか?
図書館から借りてきた本で返却が近づいてきたので、気にった箇所を抜粋して振り返ってみよう。

この時代、高級香水の世界は、直観的な商品化、香水名と香水そのものに対する信仰、限定生産というやり方から、「需要」のマーケティングへと移行した。直観的な商品化の特徴は、ライフスタイルに応じてターゲットにする社会階層を選ぶことである。「需要」のマーケティングでは、競合製品、市場、文化・経済・社会環境を分析する。陶酔、幻想、パッションといったものを記号やシンボルのかたちに具体化して、欲望の対象をつくる、これがマーケティングの戦略だ。(P19)

「この時代」は1970年代を指す。最初の章では、産業としての香水がどのように発展してきたかが振り返られる。19世紀末の香水は、バラやジャスミンと言った実在する匂いの単なる模倣に過ぎなかったが、徐々に人々の「需要」に応じて、ライフスタイルに応じて、より複雑でイメージを掻き立てられる香水が作られるようになって来たことが分かる。

ひとつの素材のクオリティーのおかげで、ひとつのフレグランスが独創的になるということはあるかもしれない。だが、いずれにせよ、「美しい」ジャスミン、「美しい」バラ、「美しい」合成分子が美しい香水をつくるのではない。香水の美しさは、原材料の足し算から生まれない。原料や素材を理解し、使い、並置し、そして原料や素材に自分を再現させる、そこから、香水の美しさが生まれる。(P48)

「美しい」原料を使ったからと言って「美しい」香水が出来るわけではない点は、「美しい」染料を使っても「美しい」絵画が出来る訳ではない、「美しい」音を奏でる奏者を並べても「美しい」音楽が生まれる訳ではない点と共通だ。そこにこそ調香師、画家、作曲家の価値がある。この本の中でエレナは「匂いの作曲家」たりたいと書いているがまさにその通りだ。

この本の中では、彼が新たな香水を作るときにどの様に着想を得、どういった考えに基づいて香水を想像しているのか、エルメスの「庭シリーズ」を引き合いに説明している。少し長くなったので、これに関しては次回に回そう。

・Hermesの「ナイルの庭」はどの様に生まれたか

2012年3月26日月曜日

大学院を修了し

前回の更新から早ひと月。この間、新居への引越しなどでバタバタし、あっという間に一ヶ月ほど経過してしまいました。そうこうしている間に先日大学院の修了式を終え、修士課程を修了することが出来ました。結果的に博士課程には進学しませんでしたが、得るものが多い二年間だったと思います。

修士課程まで進学して民間に出るのであれば、抽象的で実務には役立たない経済学なんて専攻せず、ロースクールやMBA、会計職大学院など直接的に役立つ分野に二年間を投じたほうが懸命だったのではと思う方も多いでしょう。コンサルティング業界なんてものに進むなら尚更でしょう。

しかしながら、こうした抽象的な(実際には統計的な分析も行うので現実に則したものですが)分野だからこそ、そこで身に付けられる考え方は適用範囲が広く頑健で陳腐化しにくいものだと感じています。
学位記授与式で研究科長も同様な事を仰られていました。法律や会計、経営学が研究対象としているもの全てを対象とするのも方法論で定義される経済学の特徴でしょう。ある社会現象が発生するそのメカニズム自体を対象とする点、最適を定義し一貫性を持って強いロジックを作れる点を強調するあたりは流石にミクロ経済学者だなあと感じました。




僕の周りには研究者としてやっていくと決心しきれないために大学院に進むことを迷っている人がそこそこ居ます。そう云う人は、二年間の学費をファイナンス出来るなら進学してみてはどうだろうかと思います。なぜなら、進学してみてこそ研究者を目指す道がどれほど大変かも実感するでしょうし、人によっては学部の段階で思っていた以上にのめり込む人もいるでしょう。修士の段階ならある程度の大学院であれば、今の日本の労働市場では博士ほど致命的でもありません。

ある学問を学ぶときにそれが役に立つかどうか、随分矮小な話をしてしまった感もありますが、シンプルにもっとこの分野を勉強したい!と言う風に思えたことが進学の一番の決め手だったのかも知れません。その気持を汲みとって進学を許してくれた両親に感謝したいと思います。

さて、四月からは全く違う生活が始まる訳ですが一体どうなる事やら。

2012年2月22日水曜日

調香師というプロフェッショナルな世界:ジャン=クロード・エレナを知ってるか?



ジャン=クロード・エレナと言う調香師を知っているだろうか?2004年からエルメスの専属調香師を努めている有数の調香師だ。エルメスの専属調香師となる以前もエポックメイキングなフレグランスを数多く手掛けてきている。ちょうど彼の本を手に取ったのでレビューしてみよう。




ひとつの素材のクオリティのおかげで、ひとつのフレグランスが独創的になるということはあるかもしれない。だがいずれにせよ、「美しい」ジャスミン、「美しい」バラ、「美しい」合成分子が、美しい香水をつくるのではない。香水の美しさは、原材料の足し算からは生まれない。原料や素材を理解し、使い、並置し、そして原料や素材に自分を表現させる。そこから、香水の美しさが生まれるのだ。


この本では彼が香水を作る時にどういったモノからインスピレーションを得、どういった信念をもって調合しているかを垣間見る事が出来る。本人も形容しているように調香と言う創作活動が作曲に近いものだと強く感じた。馴染みの香水にどのような背景があるのかを知ることでより親しみを持つことができるようになるだろう。

例えば、彼が2003年から手掛けているエルメスの庭園フレグランスシリーズ((『地中海の庭』、『ナイルの庭』、『モンスーンの庭』、『屋根の上の庭』)はどんな香りかすごくかいでみたくなった。





さまざまな分析のパラメーターのなかから、どのパラメーターにするかは、ブランドのターゲット市場の望むプロフィールに合う理想的なダイアグラムの香水をつくりあげなくてはならない。調香師は、さまざまなパラメーターに従って匂いを選び、あるいは省きながら「カーソル」機能を使って、調香していく。
こうして調香師は、製品開発するうえでの繊細な個人的判断と創造的方法からは遠ざかることとなった。
(このような)「良い」香水は、すぐその製品とわかり、驚きはもたらさない。瞬時に、同化するように受け入れられる。



もう一つ面白い点は、香水を取り巻く競争環境、マーケティング戦略と香水の関係の変遷や知的財産権の問題と言う事に言及している点だ。
マーケティング戦略に従い多くの人々にうける「良い」香水を作るという事と真に独創的な作品を作るということのトレードオフに言及しているが、これはマーケットインかプロダクトアウトかと言う最近の議論とまったく同様だ。
また、香水のレシピに関してまだ知的財産権がきちんと確立していない点に関してはなかなか驚いた。香水の本場フランスの判例では、音の商標と異なり、匂い商標(marque olfactive)は、それが図案的に表現することが不可能であり、またそれ自体で権利者の商品を他社の商品と識別する力も持たないという理由から、認められていない そうだ。こうした香水の知的財産権の問題に関してはどうやらいまだ進行中の問題なようだ。





惜しむらくは訳がいまいちな点でしょうか。とは言え調香師と言う普段馴染みがないプロフェッショナルの世界を垣間見る事のできるこの本の価値をそれほど下げるほどでもない。

2012年2月19日日曜日

【Macroeconomics編】ふ、ふつくしい!!経済学のテキスト表紙まとめ

経済学の洋書のテキストは表紙がとても綺麗なものが凄く多い。買ってみたもののあまりに難解で挫折したが眺めているだけでウットリ、そんな経験はないだろうか。わたしはない。

そんな見ているだけでも楽しい経済学のテキストの中から今日はマクロ経済学編をお届けしよう。他にも何かオススメがあったら教えて下さいな。

【1】Benassy "Macroeconomc Theory"

こちら
のっけから印象派の絵でも思い出す様なテキスト(いや、美術に疎いわたしが知らないだけでれっきとした美術品の可能性が)ちなみにBenassy先生は確かフランス人なのでそんな雰囲気が。

【2】Benassy "Money, Interest, and Policy"
コチラ
Benassy先生と言えば Non-Ricardian Economy におけるDSGEを扱ったこちらのテキストの表紙もお気に入りだ。ちなみに財政の発散とか扱ってるのでトピックとしてはホットかも?

【3】Scarth "Macroeconomics"
コチラ
いかにも勉強する気を削ぐようなこの表紙は一体。。

【4】DeJong "Structual Macroeconometrics"
コチラ
素敵な表紙だがタイトルとの乖離感が甚だしい逸品

【5】Barro "Macroeconomics"
コチラ
Barro御大の学部向けテキストだ。中々綺麗な表紙で気に入っている。

【6】Barro "Economic Growth"
コチラ

Barro御大と言えばこの成長論のテキストも忘れてはならないw

【7】LS "Recursive Macroeconomic Theory"
コチラ
モダンな印象の表紙がクールだが内容もモダンで投げ出したくなる人が続出する定番テキストだ。

【8】Bagliano "Models for Dynamic Macroeconomics"
コチラ
個人的にこれが知っている中でいちばんカッコイイって思ってる異論は受け付けている

【9】Wickens "Macroecomics"
コチラ
赤と青の対比が美しいこちらのテキストも中々好きだ。

【10】Galor "Unified Growth Theory"
コチラ
成長や開発の大家Galorのテキスト。何となく成長論のテキストってこう云う風味の表紙が多い。ちなみに読んだことがなかったので是非読みたい。

【11】Bewley "General Equilibrium, Overlapping Generations Models, and Optimal Growth Theory"
コチラ
Incomplete market の研究でもおなじみBewley先生のテキストは内容と中身の乖離は少なそうだw

【12】Michel "A Theory of Economic Growth: Dynamics and Policy in Overlapping Generations"

コチラ
Benassy先生といいフランス人の先生のテキストってこれなんだねw
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そんな訳でマクロ経済学編でした。何か気に入った表紙はありましたかね?