2011年10月21日金曜日

視覚的に世界経済を把握できる Worldmapper が楽しすぎる件

Worldmapper:The world as you've never seen it before.


知りたい変数に関して各国の相対的なシェアなどを国の面積に反映して世界地図を作ってくれるコチラのサービスが面白い。何はともあれ見てみよう。



■Killed by Disasters: people killed by disasters / year (1975-2004)




■Killed in Earthquakes: people killed by earthquakes / year (1975-2000)




災害、地震で死んだ人たちの数。人口規模が大きいところが大きくなるのは当然っちゃ当然だが、災害ひとまとめと地震分けてみると、分布が違うのは面白い。




■Undernourishment in 1990





■Undernourishment in 2000




栄養失調な人々の数。
中印はまだ発展段階、人口規模も大きいので大きな面積を占めている。人口が少ないわけではない先進国各国は殆ど線みたいになっている。
1990年と2000年を比べると若干中国が小さく、アフリカが大きくなっているように見える。北欧のあたりのふくらみは何だろうか?





■Internet Users in 1990



■Internet Users in 2002




1990年だと一般にインターネットが使えた人自体非常に少なかったのでそのほとんどが先進国、特にアメリカに分布している事がわかる。およそ7割程度をアメリカが占めている。

一方2002年になると随分、いや結構驚くほど世界的に普及したのだなあと感じる。中印、東南アジアの普及は著しいように見える。一方で、以前としてアフリカはそういった段階にまだないということだろうか。




■てなわけで


ぱーっと見てきたわけだが、ほかにも色々あるサイトで面白い。中高生なんかに世界の現状をざっくりと肌感覚を得るためにお勧めしたくなる様な地図ばかりだ。

ただし人口規模を調整していていないものが多いので、人口が多い国がでかめに出る傾向はあるのでそれを加味してみていく必要はある。

学部1,2年のゼミとかで議論のネタに使ってみてもいいかもしれない。

2011年10月19日水曜日

Microeconometrics Using Stata, Revised Edition が激しく便利すぎる件



Microeconometrics Using Stata : Cameron & Trivedi

Stataを使って実証分析を実際に行って行く段階で非常に役立つテキスト。辞書としても有用。


1. Stata basics 2. Data management and graphics
でStataの基本的なコードをおさらい出来る。散布図を作ったり、基本統計量を作成したり、ループやグローバルマクロなど。


2 以降は
OLSやGLS、GMM、パネルなどLinear regressionから始まり、BootstrapやML、Discrete choice と基本的な分野があらかた網羅されている。また検定についても章を割いている。

基本的な構成は各章、理論の”簡単な”おさらい→ Stataの文法 → 推計結果の数値例 となっていて非常に簡潔。 Stataにはhelpコマンドでコードの説明が出てくるがそれよりも分かりやすいし、何より実際の数値例とコードも書いてあるので理解が進みやすい。(っていうかStataのヘルプって分かりにくくね?? Nested logitのhelpとか結構謎だったんだけどw)


意すべきは
理論のテキストではないという事だ。理論の”簡単な”おさらいは各章設けられているが初見の計量手法をここを読んで学ぶことは殆ど出来ない。あくまでも学んだ計量手法を実際に運用する際に非常に役立つテキストという事だ。


合わせて読みたい
のはやっぱりWooldridgeだろうか。ちょうどレベルも似たような感じで相性がいい様に感じる。Wooldrigeは2nd editionで大幅に増量していて新しく買うなら2ndを強くオススメします。

2011年10月18日火曜日

R&Dと生産性に関する実証研究

Measuring the Returns to R&D    Bronwyn H. HallJacques MairessePierre Mohnen 
Issued in December 2009  NBER Working Paper No. 15622


これを読んでいるのでちょくちょくレビューしていこう。WPなのでリンク先からDLできる。R&Dが生産性にどのように影響しているかは非常に重要なトピックだ。
このWPでは、R&Dのリターンを計量的に分析している既存研究を非常に首尾よく俯瞰している。

Abstract
We review the econometric literature on measuring the returns to R&D. The theoretical frameworks that have been used are outlined, followed by an extensive discussion of measurement and econometric issues that arise when estimating the models. We then provide a series of tables summarizing the major results that have been obtained and conclude with a presentation of R&D spillover returns measurement. In general, the private returns to R&D are strongly positive and somewhat higher than those for ordinary capital, while the social returns are even higher, although variable and imprecisely measured in many cases.

マクロレベルの話をすると
生産性が長期の経済成長率の大部分を決める事は明らかになってきている。そのため生産性を左右するR&D投資を理論、統計的に分析する事は国の豊かさを議論する上でも重要だ。

90年代を待たずして長期的な経済成長率の源泉が技術進歩であることは新古典派のマクロモデルで明らかにされていた。また、技術進歩が経済成長に与える影響も実証的に数多くの研究がなされてきた。一方、技術進歩が長期的な経済成長に影響を与える事は解明されつつも、どの様なメカニズムで技術進歩が起こるのかは理論的には明らかで無かった。

こうした技術進歩を内生的に決定するモデルはRomer(1990)などの内生的成長理論に始まり、技術進歩のプロセスがより詳しく理論化されてきている。内生的成長理論の文脈で行くとR&Dには外部性があることになるので市場均衡は最適にはならない。こうした場合、R&Dなどに補助金をかける事でパレート改善する事が出来る。こうした政策を設計する場合でも、R&Dの生産性や収益率に対する寄与を計量的に把握することは重要だ。


一方
産業レベル・企業レベルでの話をすると実証研究もマイクロデータの整備、計量手法の改善により精緻化が進められている。(ボリュームが圧倒的に違うのはひとえに私の背景知識の差を反映している。wwww)



誰がどんな事に興味がるかって言うと
Policy maker は社会的なリターンに興味があるだろう。内生的成長理論のところでも指摘した通り、個々のR&D実行者がその投資を実行するインセンティブを理解して政策を組む必要があるからだ。一方で、Economistや企業の意思決定者たちは特に後者に興味があるだろう。なぜなら、ほぼ無限個あるR&D投資戦略の中でどれを取るべきかを評価しポートフォリオを組まなくてはならないからだ。ってな事に触れられている。


と言う訳で軽くintroductionに触れながら一回目。メソドロジーは次から触れるかも(予定は未定である。

2011年10月12日水曜日

ベストプラクティスはいつもベストか?

(画像はコチラから参照)


統計分析を行う上でしばしば注意しなくてはならない問題にサンプルセレクション・バイアスと言うものがある。
私たちがある集団Xに関して事象Yを統計的に主張したい時、最初にすることは何だろうか?もちろん、サンプルを集めることだ。このサンプル集めに偏りがある時、どういった問題が起きるだろうか?

例えばある日、講義に出席している生徒に対して日頃の出席率を調査したとしよう。仮に出席者たちが日頃の出席率を正直に答えたとしても受講者全体の出席率を正確に把握することは出来ない。
なぜか?たまたまその日欠席した受講者のデータが欠損しているからだ。そして、その日欠席している人たちは恐らく日頃の出席率も低い傾向があるだろう。この方法で調べた受講者全体の出席率は高めに出てしまう訳だ。




このように偏ったサンプルを大真面目に統計処理して導き出された主張は、しばしば過少評価、過大評価、はたまた全く意味のない主張となってしまう。


さて、MBAのコースなどでしばしば行われるケーススタディはこのサンプルセレクション・バイアスを回避できているだろうか?

『ベストプラクティスに学べ』

巷にはジョブスの語録や仕事術みたいな本が溢れかえっている。確かにジョブスは偉大だ。これは疑いようがない。しかしながら、我々が見聞きするベストプラクティスを提供してくれる企業や偉人はどんな集団だろうか?明らかに生存者バイアスが掛かっている。ブライテストな集団が生き残り、ベストプラクティスが世間に広まる。

ベストプラクティスを提供してくれるブライテストな企業の事例ばかりを見ていてもそれはごく限られた集団の特性を拾っているだけで、例えばコンサルタントやMBA取得者、政策決定者が向き合わなくてはならない『その他大勢』の企業の特性に合う示唆を提供しているとは言えない。

偉大な成果から学ぶことは否定されないが、ブライテストじゃない集団がベストプラクティスをそのまま鵜呑みにしたところで失敗の可能性がある事に、少なくともバイアスがかかっている事には自覚的でなくてはならない。